茂木健一郎private page topへ

茂木健一郎の夢のギャラリー

私はしばらく前から、夢に興味を持って、朝起きたときに夢の内容を覚えている時には記録することにしています。その夢の中から、幾つかご紹介いたします。夢の幾つかは、英語で記録されています。

 

These are records of dreams that I had.

1996年2月2日 ガラスドームに氷河期が来る夢

1996年2月19日 ロケットおじさんの夢

1996年4月15日 革命の夢

1996 29th July The Dragon

1996年12月4日 清流の夢

1997 January 16th An Interview with Francis Crick

1997 March 7th The bear and the castle

1999年1月5日 ロシア軍の入城とヒトラーの代読

 

 

1996年2月2日 ガラスドームに氷河期が来る夢

 

細長い八面体の形をした巨大なガラス状のドームの中にいる。何故だか知らないが氷河期が来ることが予想されていて、ガラス越しに外を覗くと、すでに巨大なねずみがそこここから現れて歩いている。「ああ、もう出ているよ」と叫ぶ。

ドームの中は自由に飛び回ることができる。ドームの頂点あたりに、笛の吹き口のような出入口があり、そこから一度に一人だけ出ることができる。アクア・ラングを付けて泳ぐ時のような格好で外に出ると、ほんのりと暗く、下には山のような地形が見える。ガラスのドームから東南にしばらく行ったところに、鎌を持った巨大な女神像があって、その目や鎌の先が青白く光っているのが見える。女神の造形は、古代の豊満ヴィーナスを細長くしたようなもの。女神を見た後、さらに飛び回る。

しばらく立ってガラス・ドームの中に戻り、また再び笛口から出るということを繰り返す。次第に、ドームの中の状況が悪化してくるのが判る。空気が悪くなってきている。かといって、ドームの外は既に氷河期になっていて、棲むことができない。

何回目かに女神の近くを飛んだ時、「ひらめく」。事態を打開することを、女神に頼むのである。言葉には出さないコミュニケーションで女神に頼むと、女神がドームに向かってゆっくりと歩き出す。それを、空中に漂いながら見て、なぜ今まで思い付かなかったのだろうと思う。そのうち、女神が鎌でドームを破壊しようとしていることに気が付く。これから一体どうなるのだろうと思いながら、暗闇の中を青白く光りながらドームへ向かう女神を見続けている。

 ここで目が覚めた。

ページのTOPに戻る

1996年2月19日 ロケットおじさんの夢

 

 おじさんの発明家が、手製のロケットで打ち上がって、自分で降りて来ると言うので、着陸地点で待っている。どうやら、空き缶を沢山使って、それでロケットを作るらしい。待っている場所は、関東平野の中にある自宅の近くである。

 待っている間、どのような格好で降りてくるのだろうと考えている。やがて、巨大な一つの空き缶に付着した小さな箱のようなものが、ちょうど二つ一緒になると自動車のような格好になって降下してくる。最初は、あれ、あんなに早く降下して大丈夫かなと思うが、地面に着く時にはうまい具合に減速して見事に降りる。

 降りてきたおじさんがロケットと一緒に打ち上げたものが目の前に見えている。ブリキの缶入のおかしが2箱もあり、その他にもいろいろごちゃごちゃしたものがある。これらの品物が、細長い机の上に並べられている。これを売って、金儲けをする積もりだなと思う。

 私は、一生懸命おじさんのロケットの写真を電子カメラで撮っている。何とか、原理を掴んで自分も空の上へ行ってみようと思っているのだ。何万個という缶を集めて作ったはずなのに、何故か1個の巨大な缶になっているところなどに興味を持つ。だが、ふと脇を見ると、おじさんが作った黄色い表紙の手書き印刷したようなパンフレットがあって、ああ、これを見れば良いのかと思う。

 そのうち、オークションが始まる。何を売るのかなあと思ったら、タモリのような顔をした人物がくしゃくしゃになったちり紙を持って掲げている。オークションが始まり、8ポンドから値がつく。どんどん値が上がって、やがて80ポンドという若い男がいる。タモリがそこで、「おじさんが宇宙から帰って来て最初に淡を吐いたのをそんなに高い金で買うやつがいるか」と言って、みなの笑いをとる。

 おじさんが私のいるところに歩いてくる。私は、ちょうど、電話で叔父さんの奥さんに、「無事着きました」という報告をしていたので、「ああ、今ちょうど見えました」と言っておじさんにかわる。その時おじさんの姿を初めて見たが、髭や眉毛が濃く、極端に言うと栗のような格好をした精悍で粘着質そうな表情。電話に向かって、「ああ、無事着いたよ。それにしても、降りてすぐに酒があってよかったよ。」となまりの強い言葉で話している。それを聞いていて、あれ、おじさんはどこから打ち上がったんだっけ? と考えていると、宮城県から打ち上がって、ちょうど上に凸の放物線を描いて関東に落ちてくる軌跡が見える。そうか、意外と長い距離を移動したんだなと思う。

 突然英字新聞の囲みくらいの大きさの記事が目に浮かんで、American interest in the one man made "space rocket" fades. と書かれている。どうやら、アメリカはおじさんの偉業に並々ならぬ関心を持っていたらしいが、何らかの理由で急に関心をなくしたらしい。もう一つ、国際的な保険会社が、何らかの理由でおじさんに巨額の支払いを要求されているらしい。彼らは、これは国の名誉にかかわる問題だと言って拒否しているらしい。それで、ああ、おじさんは、国家だけにロケットが独占されている状況に風穴をあけようとしてロケットを作ったんだなあと思いあたる。同時に、これは「国際反骨」だという言葉が思い浮かぶ。何故か、国際反骨という言葉の感じが面白くて、自分で感じ入っていると目が覚めた。

ページのTOPに戻る

 

1996年4月15日 革命の夢

 柵に囲まれた建物の前庭で、これから労働者たちがデモをしようとしている。兵士たちが、1メートル間隔くらいで2列に並んで立っている。その間の狭い空間をデモ隊が通っていくらしい。私は、その狭いラインのまさに目の前にいたが、あぶないかもしれないと思って、前庭の横の、少し離れたスペースに引き下がる。柵の回りには、沢山の市民が見物に来ている。この時点では、革命前のロシアか中国という感じである。

 やがて、何か騒ぎが前庭で始まる。そして、青っぽく、つややかな色の服を来て、前の部分に幅の狭いつばがある帽子をかぶった男2人が、銀色に輝くピストルを持って侵入してくる。まさか撃ち合いにはなるまいと思って見ているうちに、警備の男が二人に気がつき、コンクリートの脇の下くらいの高さの塀から上半身を乗り出して二人を撃とうとするが、その前に撃たれてしまう。

 それから撃ち合いが始まる。男2人は、私の前にかがんで、さらに前庭に進もうという気配を見せる。男の一人がこちらを振り向く。私の横にいた男は、皇帝か何かだったらしく、男に撃たれてしまう。そして、私に向かって、お前は死刑になるぞみたいなことをいう。男の顔は、モンゴロイドで、意外とやさしい顔をしている。そのように嚇かされているにも関わらず、私はかえって男を頼もしく、好ましく思う。

 私は、この様子は今ごろラジオで日本にも知らされているに違いないと思う。父親はそのニュースを聞いて、どう思うだろうか? それにしても、男の持っていたピストルの、ありふれたデザインなのに、そのメタリックな光沢や醸し出す雰囲気が、いかにも未来からのものであることが印象に残る。

ページのTOPに戻る

29th July 1996 The Dragon

My house is on the banks of a lake. I am looking at the lake from up in the sky. There is a rectangular house in the center of the lake.The water is surrounding all around the house. It looks like the last scene of Solaris. The only difference being that no land is visible around the house, water surrounding the house without any gap. The house has a blue roof. I hear an announcer reading the news from the radio. They have apparently built the community meeting house in the middle of the lake. Then, after they finish building the house, they plan to let the water out. Although the house appear to be above water, it is actually at the bottom of the lake. I find myself wondering what kind of use they would have for a community meeting place located in such a middle-of-nowhere land.

I am watching the water-filled bath-tub in my house. The inspiration occurs to me that if I pull the stopper of the bath-tub and drain the water, the same thing would happen to the lake. The water will go out and landscape under water would appear. The thought of my small act causing such a macroscopic effect frightens me, but I pull the stopper out and drain the bath-tub. When I look out of the window, I find that surely the water has begun to recede. Not only within the lake, but also in the valley. People have been waiting for the water to recede. As the water goes away, a civilized landscape appear, with roads and human made structures, which have been hidden beneath the water. People begin to walk around in the newly exposed land.

After draining the lake I go away from the house for a long period of time. (maybe 5 years). When I come back, I have the feeling that I have forgotten something for such a long time. I remember. I used to keep a dragon in one of the towers. I am almost afraid to go there, but I go. I open the iron door that leads to where the dragon is, and I find him crouched in the dungeon. When he sees me, he opens up his wings and rubs his face against me. He has been here waiting for me for all those years, and a great wave of emotion fills my heart. The dragon is about 3 meters high, has a ebonite-brownish color, and has a appearance of being made of rubber.

I look out of the window of the tower with the dragon, and I catch the sight of beautiful green leaves that are shone on by the sunshine. A sense of euphoria fills my heart.

ページのTOPに戻る

1996年12月4日 清流の夢

 象牙のような色をした岩が、ちょうど半円形にくぼんでいて、そのくぼみが直線的に伸びている。くぼみの列は数個並列に並んでいて、全体で幅が20メートルくらいになっている。そして、そのくぼみの列の上を、これ以上ないくらいきれいな水が流れている。水は、くぼみのところだけでなく、くぼみとくぼみの間の盛り上がったところにも流れていて、全体として、盛り上がったガラスをかぶせたような光学的効果を表わしている。くぼみの形態は、全体として人工的な、太古の遺跡のような雰囲気を漂わせ、その上に流れる水には生命の気配はないが、清澄でいつくしみに満ちた場がそこにある。

 私は、その清流の横にたたずんでいる。不思議なことに、この清流はケンブリッジの近郊らしいのだ。このような地形は、絶対にないはずだと私は考える。ここに着くまでたどってきた道をふりかえる。そうだ、あの家と家の間の小路を、右に曲がったんだっけ。私は、振り向く。すると、川の氾濫原が急に終わっていて、そこに3メートルくらいの土がむき出しの崖があり、その上が、ケンブリッジに特有の緑の芝生帯になっていることがわかる。そこで、私ははじめて納得する。そうか、いつも、あの芝生帯の向こう側から眺めていたから、わからなかったんだ・・・

 その後、意識が混濁して、はっきりした時には、大きな川の中の鉄塔に上っている。これも、ケンブリッジの近郊らしい。その前に、お店のおばさんから自転車を借りて、もう日暮れまであまり時間がないので(午後4時に近かった)、あまり遠くにいけないなと思ったことを覚えている。鉄塔はとても高く、私のいるピークは鉄のかごで覆われているものの、下を見下ろすことができて、下腹部がすーすーする。降りようと思って下を見ると、垂直に落ちる階段があるだけで、そこを一段一段降りて行かなければならないらしい。私は、その過程の恐ろしさの予感に緊張する。ここで、再び意識が混濁した。

ページのTOPに戻る

1997 January 16th An Interview with Francis Crick

Francis Crick is walking along the bank of a river. The bank is covered with golden simmering sand. In the distance, you can see a rich forest. The atmosphere is that of an subtropic land. Francis Crick is being interviewed about his "panspermia" hypothesis, that life originated not here on earth, but came from outer space. Surprisingly, The invisible interviewer (we hear his voice only) is Francis Crick himself! Watching Francis Crick, I think to myself "what essential difference does the panspermia hypothesis make?" and I conclude "it makes difference only so far as that life might have originated in an environment different from those found on the surface of the earth. There can be some "bottleneck" in the genesis of life, and that bottleneck might be only surpassed in a environment foreign to the earth. That special environment would act like a catalyst..."

As these thoughts occur to me, my vision sweeps away from Francis Crick and the river bank, to the left, where I find a gentle, peaceful stretch of an ocean. I see a strange flying object approaching from the distance. It is shaped in a oblique box-like form, with a nozzle bent by 90 degrees protruding from one corner. The nozzle seems to be the floating and moving devise. As I see the object in the same direction as the sun (gyakko), I cannot see its colour. It appears jetblack. As it comes to my left side, it rapidly slows down and lands on the beach. A man appears from it. During its flight, I have seen two black figures on the beach. Now that the flying object has landed, I direct my attention to these men. They appear to be dressed in an very exotic attire, and I realize that I am in the Islamic world. The man who has descended from the flying machine complains something like these two men being beggars. The man in the flying machine is superior to these two Islams.

Now the whole history of the man in the flying machine and the native people of this Islamic land comes into my mind. The native people recognize the superiority of the flying man, and whenever they see the flying machine, they salute by raising their special cane, which is bent like the handle of an umbrella. First the flying man likes the salute, but as it happens ever so often, he gets tired of returning salute every time he spots a native man on the beach. So the flying man invents a saluting devise. He attaches a mirror on the bottom of the flying machine, so that a saluting native can be spotted. Moreover, he puts a hat at some distance from the head by attaching it to the top of the rod protruding from his headgear. The idea is that the hat is constantly "raised" to indicate salute. The original hat was coloured in red. Now, the native people gets fascinated by the sight of the saluting hat. So commercial manufactures begin to sell "saluting hat headgear". I see the image of a poster with three men in a row, each equipped with the latest "saluting hat headgear". I see the three hats floating in alignment above the three heads of natives.

The above history of the saluting hat occurs in my mind within a few seconds. I say to myself, "now I know why people wear hats at all. The essence is to raise the hat in order to salute. That is the only reason why people wear hats!"

Now my thoughts return to the origin of life. I watch the tranquil, gentle ocean peacefully waving its way. I see small islands. My heart is filled with bliss to watch such a beauty of nature. There are three particularly small rocks in the middle of the ocean, and the wave almost runs over the tops of these rocks. As I watch the wave movement around the three rocks, an enigmatic understanding of the harmony in nature comes into my mind.

Then I suddenly see this most beautiful green hill by the seashore with shrubs here and there on its slope. The shrubs can be seen by spots, just like a herd of sheep in the green hills of south England. The sun is shining, and the green is illuminating. Then the history of a theory of erosion comes into my mind. Apparently, some 100 years ago, people had this theory that erosion would destroy eventually all the land on earth. They reasoned that the surface sedimentation rich in nutrition will be gradually washed down to the sea, so that the land will become increasingly sterile, until there is no life on earth. I laugh at this alarmist prospect. I say to myself. They did not know that the eroded surface will sediment on the ocean floor, and the ocean floor will eventually be raised above water, so that new land is formed, and the process of vegetation and life can begin all over again. They did not know the whole cycle of geological life! My heart is filled with a sense of a future in harmony as my view slowly scans the glorious green hill by the sea.

The whole sequence of this dream should have taken less than a minute. And I think I have never heard of the erosion theory of the fate of the life on earth in my waking life.

ページのTOPに戻る

1997 March 7th The bear and the castle

I am climbing up a particularly narrow and steep path in the mountain. It is approaching night. At some point, the path makes an almost zigzag turn. First I think I am alone in the path, but later I realize there is one rural girl clothed in dark blue kimono in front of me. I look back, and to my horror, I discover a black bear coming up the path I just came up. The distance to the bear is no more than 10 meters. There is another rural female walker between me and the bear, and when she sees the bear, she panics and tries to go up the side slope of the path, and the bear comes in this direction. I stand still, quite frightened, in the hope that if I stand still the bear will not disturb me. The bear comes sniffing to me. As it almost touches me, I realize that it is not a bear, it is actually a black poodle. Its size also shrinks from a bear size into a poodle size. I am relieved, and wonder why on earth I thought it was a bear in the first place.

In the same mountain range, there is a huge castle, and I find myself inside the castle. I see no trace of human in the castle. I am trying to go up to the top, where the master of the castle is supposed to reside.

The interior of the castle is magnificently decorated. I come to a rectangularly shaped corridor. It goes around the base of the tower which is the highest part of the castle. I try to find the way up to the tower, but I suddenly realize that there is no way further up. Actually, the tower and the basement building that hosts the corridor are physically separate. I visually confirm this as my point of view floats upward and see the magnificent columns aligned on the exterior of the tower flowing down in front of me. The columns go all the way up to the top of the tower, so there is no physical contact between the building I am presently in and the tower.

I figure that there must be secret stairs hidden somewhere, and I begin to search. I go to one of the four rectangular protrusions attached to the corridor. I see a pair of mirrors facing each other on the wall. Taking a guess, I push the left mirror. Sure enough, the mirror rotates, and a dark, spiraling series of stairs are revealed. Somehow I do not feel like going up them, and I push the other mirror on the right as well. The mirror rotates, and yet another series of spiraling stairs are revealed. Now the situation become complicated, because you are not sure which spiral to go up.

My quest to the top did not succeed, and I find myself outside the castle. A sweep lady is talking to me. She says that up in the tower, there are 1000 rooms, and the master holds prisoners at his pleasure, and you are not sure when you will be released once you get caught. So I am told I was very lucky not to be held at all. I think to myself, gee, how is it possible to have 1000 rooms in that small tower?

I am looking at the highest peak of the mountain range. It is a quite massive chunk of rock, and it is towering in front of me in a menacing manner. There is a silvery shining path sloping straight up to the very top of this huge rock. The silvery shine comes from the reflection of the sun. I remember that the path used to be invisible, because there was a huge glacier hiding it the last time I saw it. The ice has melted. Now the shining path is before me as if it challenges me to climb all the way up to the rocky top. I ponder if I can make it or if I dare it.

ページのTOPに戻る

1997 April 8th Trip in a balloon over a desert

I am standing in the middle of a vast desert. I am working for a brick company, and I have persuaded somehow the company to buy a huge balloon in which to travel around the world. I just want to have an adventure on the balloon, but I tell the company executives that I intend to use the balloon for public relations purposes for the company. I put a huge ad for the company on the balloon.

I set off, and see around. I am supposed to be in the middle of the desert, but I see these cylindrical clouds here and there in the plane. These clouds, I remember, I once heard that they appear in the tropics, and when the airplane flies in these areas, they avoid these columns of clouds. If you enter one of these clouds, you are likely to encounter thunderstorms and so on. But gee, I think to myself. This is supposed to be a desert. How come these clouds are here? Then I realize that these cylindrical chunks are actually huge wooden constructs, not clouds. One question thus dissolves itself. But then another arises. Who built these huge constructions? And for what purpose?

ページのTOPに戻る

1999年1月5日 ロシア軍の入城とヒトラーの代読

(ロシア軍の入城)

 何らかの理由で、ロシア軍が東京に入ってくるという情報が入っている。もう夕方で、辺りは暗い。私は、私の父親と一緒に、通りに面して、通り側に大きな見通しの良い窓ガラスが入った家の一階にいる。部屋の中は、黒化した木で覆われていて、通りよりも少し床が低くなっているので、通りを少し見上げるような感じになっている。部屋の中に明かりはなく、通りからの街灯だけがたよりだ。ロシア軍が今にも入ってくるという状況になって、私と父親は反撃するかどうか決めなければならないことになる。下手に反撃して、戦闘状態になるのはマズイと思う。気が付くと、部屋の通りと反対側の壁に引っ込んだ棚に、錆色をした古い銃が一列にたくさんならんでいる。これが武器になるかもしれないと考えて父親がそれを引き抜こうとするが、銃はお互いに紐のようなもので結ばれていて動かすことができない。

 そのうちに、家の前の通りをロシア軍が入ってくる気配がするので、ガラス窓に行ってのぞく。すると、通りを、まるでクリスマス・ケーキのような電飾のデコレーションを付けた3段くらい、高さ10メートルのほどの黒々とした変形戦車のようなものが通り、そこにずらりとロシア兵が乗っている。その両側に、ロシア兵が一列に並んで行進している。その様子をみて、彼らは戦闘しに来たのではなくって、勝利者として行進しているだけなのだと思う。通りの角にある時計台のある大きなホテルの看板が、彼らが行進すると同時にパチンとはじけて、別の文字に変わる。それを見て、私はああ、やはり、ロシア人が入ってくると、ああやってホテルの経営もロシア人に乗っ取られるのだなと思う。そのようにして、ロシア兵が行進する後に波のように町並みが変化していく。ロシア人は戦闘はしなかったけれど、ああやって社会の内部に深く浸透していったら、もうその方向性を変えるのは難しいだろうなと感じる。

 

(ヒトラーの代読)

 私は、1930年代の前半、まだ権力を握る前のヒトラーと一緒にいる。私の目の前にヒトラーがいて、その周りにヒトラーユーゲントのような青年が二人と、主婦のような人が一人いる。ヒトラーは私にA4くらいの古ぼけた2つ折りのパンフレットを渡し、それを読むように命じる。パンフレットを見て、実はそれはもうかなり昔のもので、それがたまたま現代に残っているだけなのだなと思う。ということは、今は現代なのだなと考える。パンフレットの1面には何か政治的な主張が書いてあるが、その他の面には、赤、青、黒の色を使った印刷で、楽しげなレジャー用品のコマーシャルが乗っている。そこで、私は、ナチス党の初期の政治パンフレットの別の面にこのようなコマーシャルが載っているというのは面白い歴史的事実だなと思う。それで、もしできれば一部もらえないかとヒトラーに頼むと、確か一部残っていたはずだといって、あとで私にくれるという。私は、こんなに貴重なものをもらってもいいのだろうかと恐縮する。

 いよいよ、政治的なパンフレットを朗読し始める。何やら、ドイツの森林地帯のことが書いてあって、そこでの地元民の生活と、工芸品のことを言っている。私は、ああ、ドイツの生活、産業基盤はこんなに健全なのだということを言いたいのだなと考える。しばらく朗読しているうちに、私は日本語でパンフレットを朗読していたことに気が付く。日本語じゃ、彼らはわからないだろうと思い、改めて英語で朗読し始める。なぜかパンフレットは日本語で書いてあって、それを頭の中で英語になおしながら朗読する。

 しばらく経って、ヒトラーが何かもぞもぞと書類を出し、声明を発表する準備をしている気配がする。私は、ああ、ベルサイユ条約の破棄を宣言するのだなとぴんと来る。そして、周囲の空気が緊張するとともに、私の心の中にも緊張感が高まってくる。

 

ページのTOPに戻る

 Back to B面 Top