クオリア原理主義宣言   茂木健一郎 AXIS Vol. 109, pp.158-159 (June, 2004)に掲載  クオリア原理主義宣言   芸術作品の価値は、それを前にした時に感じるクオリ アの質で決まる。  それは言語化できるものではない。  それは記号化できるものではない。    安易にマーケットにのるものでもない。  驚くことに、言葉の芸術である文学でさえ、作品の価 値は言語化も記号化もできないクオリア体験の質で決ま るのである。  ふりかえって見れば、人生で大切なことは、全て言語 化できないことばかりじゃないか。    子供の時に友達とプールに入った時のくすぐったい気 持ち。初めてのデートの前のそわそわした時間。他者の 心とぶつかった時のずしーんと来る感じ。   なにげない日常に由来し、天上の気配の中に結晶化す る。そんなことが作品を前にして感じられた時、それを 傑作と呼び、感謝する。生きる歓びがこみ上げる。  すでに流通しているものなど、放っておけ。自らの内 なる、最も切実な、甘美な、哀しきクオリアにこそ寄り 添え。そして、そのクオリアをポップに昇華せよ。  ここに、クオリア原理主義を宣言する。 (c) Ken Mogi 2004 http://www.qualia-manifesto.com kenmogi@qualia-manifesto.com