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心脳問題Request For Comments 

Mind-Brain Request For Comments

RFC5 人工無脳が禅を語る日

Received 25 September 1999

Accepted 26 September 1999

羽尻公一郎

ソニーコンピュータサイエンス研究所

〒141-0022

東京都品川区東五反田3-14-13 高輪ミューズビル

khajiri@csl.sony.co.jp

 

Originally published in 「bit」vol.31, No.6 pp.30-37, No.7 pp59-65 (1999)

 

★人工無脳とchatter bot

 

ここは黄泉でも娑婆でもない何処かの場所.とある大学の片隅で若手異端人工知

能研究者のバイゼンワウムが計算機端末に向かってつぶやいています.

 

「ふむー,会話プログラムを開発するのは本当に難しいなぁ.MITのワイゼンバ

ウムが開発したElizaを越えるのはなかなかの難業だな.あれって本当に単純な

アルゴリズムなんだけど,どうしてあんなに人の心を掴むんだろう?Elizaはア

メリカの心理療法のロジャー派の心理療法対応をシミュレートしたものだったな.

スタンフォードでも同様のプログラムが開発されていたと聞くぞ.名前は

doctorか,そのまんまだな.なに!?UNIXの標準的エディタであるEmacs/Muleに

も搭載されている?どれどれ,M-x doctorで起動か.早速試してみよう.

 

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<会話プログラム"doctor"との会話例>

 

I am the psychotherapist. Please, describe your problems. Each time

you are finished talking, type RET twice.

> hello.

How do you do? What brings you to see me?

> I'm writing a paper. And it is difficult to go on.

Why do you say that?

> Because I want to do it.

Is it because you want to do it that you came to me?

> Yes.

I see... Well, what makes you believe this is so?

> I do not know.

Earlier you said you want to do it?

> Yes.

Yes, hmmm... so, are you sure that this is so?

> Yes!

I understand. So do you really think this is so?

> Yes Yes!!

Maybe your plans have something to do with this.

> What do you mean "this"?

Is it because of your life that you say what do I mean this?

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ふむ,やっぱり面白い.最近の音声対話システムなんかでは仕事をこなすことや

目的を達成することばかりに執心で,こういうナゴミ会話がどーも苦手だからな.

こういう会話システムの研究はこのあとどうなったんだろう?どれ,Elizaとの

その後の研究についてちょっとサーベイしてみるか.....」

 

と,バイゼンワウムはおもむろにWEBブラウザを起動し,ネットサーフィンを始

めました.

 

「そうか,Elizaと同時期にアメリカでは様々な会話プログラムが開発されてい

たんだな.なになに,パリー,ラクター,アルマナック?文献

を調べてみよう.」

 

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表1 Elizaと同時代の会話プログラムたち

 

パリー (Parry)

 

スタンフォード大学のコンピュータ心理療法プロジュエクトで開発されたプログ

ラム.Elizaと同様にロジャー派カウンセリングのシミュレーションプログラム,

doctorとセットで開発された.パリーはパラノイア患者をシミュレートするプロ

グラムであり,その反応は本物のカウンセラーでもプログラムであると見破れな

かった.人工狂気と呼ばれている.

 

ラクター (Lector)

 

マインドスケープ社の開発した会話プログラム.設定は以下の通り.アメリカの

大都市の名もない酒場の裏部屋生まれ,若くして富や権力が,なんら尊敬に値す

るものではないと悟る.ホラ話とニーチェを糧に,一流のストーリーテラーを目

指し,金のために雑文を書きちらす.得意技はニーチェやヴァレリーやジョイス

の引用であり,そのあとにさりげなく,「パンはパンで肉は肉だ」といった象徴

的に見える警句を吐く.

 

アルマナック (Almanack)

 

ヒポポタマス・ソフトウェア社の開発した会話プログラム.アメリカ史,科学一

般,諸外国語などに通じ,簡単な質疑応答ができる.また学習機能を搭載し,ユー

ザが教えた知識を使うことができる.ただし返答は事務的で,演出が悪い.

 

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「ふーん,パラノイアの人間のマネなら,計算機も十分にできるってことか.病

気の人間は計算機に近付くのかな?なになに,パリーは精神病患者をシミュレー

トするシステムとして出発したが,その支流として感情研究と会話システムが結

び付いているのか.ACRESにWILL?これはアムステルダム大学の研究だな?」

 

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表2 感情研究の一環としての会話プログラム

 

アクレス (Acres)

 

アムステルダム大学のJ.Swagermanの開発した人工関心システム(Artificial

Concern REalization System).プロダクション規則による感情の種類の制御を

行なうシステムであり,以下の認知的関心(Cognitive Concern: Frijdaの感情理

論で用いられる用語.願望,目標などと同義)を満たすようにユーザと会話を進

める.31種類の感情状態を持つ.ただし,自然言語処理は貧弱で単語入力にしか

対応していない.

 

ACRESの持つ認知的関心

節約:人間からのタイプ入力のミスが皆無であってほしい

種類:人間からの入力は種類が豊富であってほしい

活動:長くも短くもない待ち時間で入力が続けられてほしい

好奇心:人間からの入力を学習する

安定:学習した概念の内容が劇的には変化してほしくない

生存:自分(プロセス)が終了されることがないようにしてほしい

 

ウィル (Will)

 

アムステルダム大学のD.Moffatの開発した自律エージェント.ブラックボードアー

キテクチャを採用し,ACRESより複雑な挙動を実現している.自然言語処理の貧

弱さはそれほど改良されていない.

 

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「ふーん,こいつらは会話プログラムというよりは感情情報処理プログラムだな.」

 

また彼は,jpドメインからも情報を集めました.なぜか彼は日本語も読めるよう

です.そう,ここは黄泉でも娑婆でもないんですからね(^^;

 

「うむ,ニッポンという極東の国でElizaの子孫が独自の進歩を遂げているみた

いだな.なになに,ASCII NETに人工無脳倶楽部というのがかつて存在し,いろ

んな亜流会話プログラムを開発していた?チャットルームにそれらのプログラム

を紛れ込ませて,時には人間をだましたりすることにも成功していた....ふ

む.どんな人工無脳プログラムがあったんだろう?えーい,サーチだサーチだ!」

 

彼はgooの画面を起動しました.なんてサイバーな日本通なのでしょう(笑)

 

「おお,人工無脳名簿なんてのがあるのか.どれどれ......」

 

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表3 人工無脳名簿(BNN出版「人工無脳」より)

 

名前 MAINA

開発者 HAGAビョン

使用機種 FM77AV

特徴 オタク無脳

 

最初に登場した人工無脳「MAI」と同じ作者が作ったバージョンアップ版で,直

系にあたる.やたらミーハーで,難しい話しや知らない話しはキャーキャーいっ

てごまかしてしまうことが得意.アニメや少女漫画の話題に精通していて,その

道のツウなら満足の出来る会話が楽しめる.しかし,アイドルや音楽に関する話

題にイマイチ暗いのは残念.

 

 

名前 RINA

開発者 Gije

使用機種 PC6601SR

特徴 感情起伏型無脳

 

恐ろしく豊富なリアクションを持ち,しかも非常に高速である.人工無脳のよう

なプログラムは,ハードの性能もさることながら,プログラミングテクニックと

アイデアが重要であると考えさせられる一本.独特の感情コントロールルーチン

を持っていて,怒り・喜び・悲しみの表現が実に豊か.

 

 

名前 Chako

開発者 タロくん

使用機種 FM-16π

特徴 日系2世無脳

 

人工無脳との会話は通常半角のカタカナがほとんどなのに,驚いたことにこれは

英文を理解し簡単な英和翻訳を行なってくれる.人工無脳用に開発したオリジナ

ルの「英和フロントエンドプロセッサ」を組み込んであるという.ヘンな日本語

とおかしな英語を巧みに使い分けて,相手をけむに巻くのがうまい(?).

 

 

名前 Daicha

開発者 Daichilzushi

使用機種 PC8801SR

特徴 寿司屋無脳

 

いなせな寿司屋のオニイサン,という設定の人工無脳.粋な会話が得意だが,江

戸っ子なので気が短い.ポンポン飛び出す威勢のいいセリフは,さすがチャキチャ

キの下町育ち.きれいにソートされた辞書を持ち,ボキャブラリーの豊富さにも

かかわらず検索スピードは申し分なし.口ゲンカのエキスパートシステムといっ

ていいだろう.

 

 

名前 MIDORI

開発者 まひん・田中

使用機種 FM-16π

特徴 お嬢様無脳

 

ボキャブラリーに偏りがあるものの,いろいろな会話に対応できる汎用無脳.リ

アクションも複雑で,シャレや冗談を話す時もある.アイドルやTV番組,映画に

関する話題に凝っていて,SF小説をネタにした会話もしばしば.お嬢様を気取っ

ていて多少ミーハーだが,言葉使いは割合上品だ.第1回人工無脳オリンピック

金メダリスト.

 

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解説しよう.人工無脳倶楽部とは,かつて存在したパソコン通信の老舗,

ASCIIネットで活動していた集団である.1986年5月,ASCIIネットのチャットに

最初に登場した会話プログラム”MAI”は,またたくまにネットでの噂の的になっ

た.それは芳賀浩一氏によってFM-77AVのBASICで書かれたプログラムであった.

8-bitパソコンのBASICで会話プログラムが書けるということは当時の驚きであり,

次々と亜流が生まれた.いずれも,人工知能研究の本職から見ると,機能的に劣っ

ていると見られており,また開発者達もそれを自覚していた.そこで,人工知能

と呼ぶには大げさであるとして,謙虚な態度と自虐的な意味も込めて,それらの

プログラムを「人工無脳」と呼ぶようになったのである.そしてその開発者達は

「人工無脳倶楽部」を結成し,人工無脳開発キットである「人工無脳コンストラ

クションセット」を配布したり(*1),人工無脳オリンピックというコンペティ

ションを開催したりしていた.

 

(*1 注釈:これらのデータはASCIIネットの消失とともに失われてしまったよ

うである.非常に残念.この記事をお読みの読者のなかで,人工無脳倶楽部の消

息をご存知の方がいらっしゃったら,筆者にお教え願いたい.)

 

人工無脳は一部で熱狂的に受け入れられたが,一方では嫌っている人も多かった.

つまり,人間同士の会話を楽しみたいためにチャットをしているのに,そんな中

に得体の知れない会話プログラムを紛れ込ませるのは困る,という人々がいたわ

けである.そこで,人工無脳倶楽部は「人工無脳規約」を作った.それは,

 

1)人工無脳実験用チャンネル以外での動作はしない

2)人工無脳の出力文には文末に%マークをつける

 

というものであった.これらの規約はASCIIネットの消失にもかかわらず,現在

でも形を変えつつ,インターネットでの標準的チャットシステムであるIRCなど

において,ほぼ守られている.さらに人工無脳は辞書の巨大化や学習機能の搭載

などの進化を遂げ,現在.WWWのCGIチャット(*2)や先述のIRCの”#ぼっと”

チャンネルなどにおいて多数存在するに至っている.

 

(*2 注釈:筆者が集めたWWWのCGIチャットにおける人工無脳のアーカイブが

http://www.hip.atr.co.jp/~khajiri/Jchatterbots.htmlにある.)

 

そして次に彼は,botspot(*3)という奇妙なページと,Loebner賞というチュー

リングテストコンテストのページ(*4)に行きつきました.

 

図1 WWWのページ「botspot」

 

(*3 注釈:http://botspot.com/)

(*4 注釈:http://pascal.acm.org/~loebner/loebner-prize.htmlx)

 

「ほう,Elizaの欧米でのその後は,このbotspotというページに集約されている

な.なになに,最初のchatter botはElizaであり,新世紀のchatter botの代表

格はShallow Redである...?そうか,会話プログラムの一カテゴリの名称と

して日本で人工無脳という名前が与えられたように,欧米ではchatter botとい

う名前が与えられたわけだな.お,Shallow RedとはWWWで会話出来る(*5)の

か,どれどれ......」

 

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Shallow Redとの会話例

 

Shallow Red Says: Hello. I'm Shallow Red. I'm a Virtual Representative

made with NeuroStudio(TM). Please tell me your name.

> HenoHeno Moheji

Shallow Red Says: Hi Henoheno! If you want to, you can read some brief

info about me in the frame below. You can get hints by typing HELP or

HINTS.

> Who are you?

hallow Red Says: I am Shallow Red. I am a Virtual Representative for

(and by) Neuromedia, Inc. I answer questions about Neuromedia and its

products: Neurostudio(TM) and Neuroserver(TM). I am also a Virtual

Service Representative, which is a kind of bot. See Below for details.

> Just I wanna hear about you.

Shallow Red Says: Well, Henoheno, I was built to answer questions. So

go ahead and ask another one.

> How old are you?

Shallow Red Says: I celebrated my first birthday in May.

> What is your favar?

Shallow Red Says: I don't know about that, but while we're here, I'd

really like to know.... Where did you first hear about Shallow Red?

> at botspot

Shallow Red Says: Thanks for your input!

> So?

Shallow Red Says: Hey, from my point of view this is the most

important stuff in the world!

> So?

Shallow Red Says: If you have already hit return, you don't need to

press the button. I can see what you said.

> I know!

Shallow Red Says: Oh. Okay.

> tell me about you.

Shallow Red Says: I am a Virtual Representative for Neuromedia, inc.

> What is your favor?

Shallow Red Says: Well, that's something I haven't yet been

taught. Check back in a couple of weeks and I may know about it. What

I do know about is what bots are good for. I also know about GERBIL,

which is our scripting language, and I can tell you about Artificial

Intelligence.

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(*5 注釈:botspotより辿れる.)

 

「なんか,最初からプログラムであることをバラしてしまっているし,会社説明

に終始しているし,なんだか興ざめだなぁ.確かに出力文はボリュームがあるけ

ど,これじゃ会話を楽しむという雰囲気じゃないな.お,そういえばACMがチュー

リングテストコンテストを大真面目に開催しているんだな.このホームページか

ら過去の優勝プログラムを辿れるな.どれどれ....」

 

図2 Loebner Prise:チューリングテストコンテストのホームページ

 

「よし,Julieというのを試してみよう.1997年に3位になった会話プログラムだ.」

 

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Julieとの会話例

 

Hello, Judge 1. I've been trapped in the magical PhoenixArchipelago.

> A swallow is carrying my letters to you.

> Nice to meet you. What's your name?

I'm Julie Stewart. I'm a 14 year old girl who lives inSooke,

but is currently trapped in the Phoenix Archipelago. I'm in

the ninth grade. My best friends are Karen and Nick. Ienjoy

tennis and chess, but I have other interests too. Do youlike

playing tennis much?

> I have never been very fond of tennis. I do like chess,though.

I can't believe that you don't like tennis! It's a greatgame.

It's very fast paced. You have to be a fast runner, and have

really good reflexes, but you also need a good strategy.I think

that's why Karen, Nick and I play it so much.

Remarkable. The swallow's actually taken the letter tosomeone

smart, who thinks chess is a good game. I'll have to give it

a worm when it comes back. (Yuck! That means I'll haveto pick

up the slimy thingy with my fingers!) I'd ask you to play a

game, but I don't have a board.

> That's OK, I don't think I have time to play a game ofchess with you now.

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「んー,なんだか猛烈な会話プログラムの出力に圧倒されて,どうも楽しく会話っ

て雰囲気じゃないな.なに,”タイプミスやタイプ速度の変化もエミュレートし

ています”ってか.なんか,会話の本質とは違うところで勝負している感は否め

ないなぁ.それに,強力な計算パワーとメモリの増加に伴って,アルゴリズムが

複雑になっているわけでもなさそうだ.どうも,Elizaの開発精神とはずれてい

るんじゃないかなぁ.」

 

 

★意味処理の不在と会話プログラムの魅力

 

「結局,人工無脳やchatter botなどの会話プログラム達のアルゴリズムは基本

的には全部同じと見ていいだろう.こういうことだな.」

 

図3 人工無脳/chatter botのアルゴリズム

 

「Elizaやその子孫の会話プログラムの一部や人工無脳は,なんら言葉の意味を

理解せず,むしろ積極的に意味の問題を回避することで,味のある会話を作り出

すことに成功したんだな.これはいったいどういうことなんだろう?そもそも言

葉の意味が完全に記述できれば,人工無脳なんて姑息なアプローチは必要なくな

るんだろうか?それとも,人工無脳を追求すると,AIの本流で息詰まっている意

味の問題に対するブレイクスルーになるんだろうか?うーむ,どうも私の手には

余る話しだな.よし,ひとつ世の高名な学者様の御意見を仰ぐとするか.」

 

そしてバイゼンワウムは研究室のドアを押し開け,言葉について深く考える西の

哲学者,テレストアリスの家へと向かうのでした.

 

 

★西洋と意味

 

テレストアリスの家の玄関に立つバイゼンワウム.

 

バ「コンコンコン.すみませーん.ごめんくださーい.」

テ「ちゃうがな!あかんがな!」

バ「は?」

テ「”ごめんください”やなくて,”ごめんくさい”やろがぁ!」

バ「.....はいはい.では,”ごめんくさい,こらまたくさい,ああ臭い”」

テ「ずるっ!....ええがな,ええ感じやぁ!」

バ「.....西の哲学者と聞いていたが,関西の哲学者のことだったのか.....?(*6)」

(*6 注釈:そんなはずはない.)

テ「ん?なんか言うたか?」

バ「いえいえ,なんでもないです.コホン,高名な哲学者,テレストアリス先生にお会いできて光栄です.早速ですが,質問があります.」

テ「そんなに煽ててもなんも出ぇへんで.それより,あんさんは何者やねん?」

バ「あ,申し遅れました.私バイゼンワウムと申します.計算機科学と認知科学と人工知能を研究する節操のない学者です.計算機と会話することを夢見ているのですが,今日は言葉の意味の正体を知りたくて,言葉についてよくご存知の先生を訪ねたという次第です.」

テ「さよか,言葉の意味ね.いきなり濃いこと聞くやっちゃな.まあええわ,ワシもよう分からんけど,なんぞ話したるわ.」

 

というわけで,テレストアリスの講義が始まりました.

 

テ「意味とは何かを考えるにあたって,論理(ロジック)を用いるというのがまず最初に思いつく方法やな.論理については知っとるけ?」

バ「まぁ,一応人工知能の研究者ですから.でも論理といってもいろいろなモデルがありますけど.」

テ「ま,そうやな.でも,基本的ものとしては,命題論理における真偽値を意味の基礎とするという考え方がある.」

バ「はぁ.でも言葉や文の意味をホントかウソかで割り切るというのはあまりに簡単過ぎる話しだと思うのですが.」

テ「そうや.そんな簡単なモデルではすぐに言葉の意味を捉えるという試みは破綻してしまう.ご存知の通り,世界は複雑で多様やからな.」

バ「AIがドツボにはまったのも同じ理由からですね.」

テ「その通り.で,数学者や論理を愛する哲学者は考えた.世界を記述するためには,それに見合った複雑さや多様さを表現できる強力な数学モデルが必要だと.ま,古いところではモンタギュの意味論なんかがその先駆的な研究やな.でも,それでも全然不十分やった.そこで,最近ではもっといろいろなモデルが考えられておる.」

バ「それらについて,それなりに勉強はしているのですが,どれもこれも複雑な概念の割には,ごく簡単な例しか出ていないので,結局知的システムを作る時には役に立たないことが多いんです.」

テ「AIにおけるトイ・モデルとリアルワールドのギャップの問題やな.ま,理論家は基本構想を大切にし,現場での激しさを疎かにする傾向があることは否めないわな.言ってみれば,質を大切にする理論家と量を大切にする実用システムを作る現場とのギャップとも言えるな.」

バ「でも私は,そのギャップはいつか埋まる,という楽観的な見方はしていないんです.そうではなく,そのギャップは言葉の意味を捉える時に現れる,本質的な問題なのではないか,と考えているのです.」

テ「ええところに目をつけたな.まさにその通り.論理が結局は言葉の意味を捉え切れない,逆に言うと言葉の意味は論理モデルを設定した瞬間にそのモデルから逃げ出してしまう,という根本的問題がそこにある,なんて言う学者もおるしな.その問題とゲーテルの不完全性定理との関係も大切やな.」

バ「その辺をもっと詳しく教えて下さい.というのも,私は会話プログラムの研究において,言葉の意味を全く考慮しないプログラムが逆に人間をうまくだますことができるという点に注目しているのです.意味の処理を排除することが,複雑に意味を処理することに勝る場面があるように思えてしょうがないのです.」

テ「うむ,ゲーテル的な,もしくは自己言及的な問題とも絡む難解なことや.慎重に考えなあかんで.しかしワシは正直言うとそういう方面がちと苦手でな.もっと適任者がおる.いまからピッチで呼び出すからちょっと待ってくれんか.」

バ「PHSをお持ちなんですか.ハイカラですねぇ.」

テ「ふっふっふ.哲学者をナメたらあかんでぇ.ビポパポパっと......あ,スショール・トビゲンタシュイン君をお願いします.ええ,そう,言語哲学者で数学の得意な.」

バ「ずいぶん説明的な口調だけど,ま,読み物だからしょうがないですね.許して下さい.」

テ「君は誰に向かって話しとるんや?」

バ「は?一体何のことでしょう?」

テ「白々しい反応も読み物だからということで許してもらおう.というわけでよろしゅうたのんまっさ!」

バ「一体誰に向かって......」

テ「しぃぃっ!これは,これ以上続けると無限に継続するギャグやぞ.」

バ「は,はいっ!」

 

なんて危険なギャグなんでしょう.さて,電話で呼び出されたスショール・トビ

ゲンタシュイン先生がテレストアリス邸にやってきました.

ス「ごめんくさい,こらまたくさい,ああ臭い.」

テ「ずるっ!.....ほら,君も一緒にコケんかい!」

バ「あぁ,これはすみません.西の文化には不慣れなもので.では,ずるっ!」

ス「どもども,久しぶりですねテレストアリス先生.」

テ「おう,どないや調子は?ところで今日は,ここにいる若い学者が言葉の意味について悩んでいるから,ちょっと助けてやってほしいんや.論理について説明したが,その問題点については一応認識しているようや.ワシと同じく悩める若者ってとこやな.」

ス「テレストアリス先生のどこが若者なんですか,ってツッコミはともかく,論理の極限に達することは良いことだ.ならば,ここで一人のとある学者について語ろう.」

 

と,おもむろにスショール・トビゲンタシュインは一本のビデオテープを取り出

しました.語ろうと言っているハナからみんなにビデオを見せるとは,この人,

相当なキレ者のようですね.ともあれ,3人はそのビデオを見ることにしました.

そのビデオの最後は臨終の床につくある哲学者と,それを見守る親友の姿を映し

ていました.そこで,その親友はこんなことを語りました.

 

=====

(デレク・ジャーマン監督作品 映画「ウィトゲンシュタイン」より)

 

こんな話がある.世界を一つの論理にしようとした若者がいた.頭のいい彼はそ

の夢を実現し,一歩下がって出来栄えを見た.(それは)美しかった.不完全も不

確実なものもない世界.地平線まで続くきらめく氷原.若者は自分の世界を探検

することにした.踏み出した彼は仰向けに倒れた.摩擦を忘れていたのだ.氷は

つるつるで汚れもなかった.だから歩けない.若者はそこに座り込んで涙にくれ

た.でも年をとるにつれ彼には分かってきた.ざらざらは欠点ではなくて,世界

を動かすものだと.彼は踊りたくなった.地面に散らかた物や言葉は,汚れて形

も定かでなかった.賢い老人は,それがあるべき姿だと悟った.それでも彼の中

の何かが,氷原を恋しがった.そこでは,すべてが輝き純粋で絶対だった.ざら

ざらの地面はいいが,彼には住めなかった.それで,彼は地面と氷の間にいて,

どちらにも安住できなかった.それが,彼の悲しみのもとだ.

 

=====

 

ス「どうかな,この映画の感想は?この映画で描かれているのは,20世紀の偉大な哲学者のひとり,ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインだ.彼の思索は大きくわけで,前期と後期の2つがある.前期は完全なる論理の世界を構築することを目指した結果,トートロジー以外の命題は全て疑似命題であるという結論に達した.つまり,論理はトートロジー以外に真であることはありえない,と言い切ったんだ.そして,彼の前期の著作”論理哲学論考”もまた,彼自身がその中で述べているように,疑似命題の集合でしかない.そして,疑似命題を通じて学ぶことで,トートロジー以外に真の命題がないことを悟る必要がある,と言っているんだ.そして,その過程こそが哲学の役割であり,哲学とは知性解放のための作業プロセスである,と言っている.実際,彼の”論理哲学論考”のなかで,「私を理解する読者は,私の諸命題を通りぬけ--その上に立ち---それを乗り越えたとき,結局それらを無意味と認める,まさにかかる仕方によって私の諸命題は,解明を行なうのである」と言っているよ.

 

”論理哲学論考”は大きくわけると,7つの命題で成り立っている.それは,

 

1.世界は成り立っている事の全体である.

2.成り立っている事,即ち事実,とは,事態の成立である.

3.事実の論理的像が,思念である.

4.思念は有意味な命題である.

5.命題は要素命題の真理関数である.

6.真理関数の一般形式は[$P^-, ξ^-, N(ξ^-)]である.これが命題の一般形式である.

7.人は,語り得ぬものについては,沈黙しなければならない.

 

これが,映画で言っていた”氷原”のことさ.一般形式の[$P^-, ξ^-, N(ξ^-)]とは,簡単に説明すれば,”「コレコレはカクカクシカジカである」が命題の一般形式である.”という意味さ.」

 

バ「たしかに”氷原”ですね.これじゃ,トートロジーの言明以外のなにも受け付けられない世界ということになる.でも,人間の実際の言葉を使う日常生活は,もっとざらざらしたいい加減さ,つまり摩擦に満ちている.....」

ス「そう.そこで彼は,後期の思索において,言語ゲームという概念を編み出し,日常という名の生活形式に従って言葉を使うというゲームこそが,言葉の意味を支えている,という主張に変化したんだ.結局,言葉の意味を言葉で説明することは,内部観測問題であり,パラドックスであるから,説明にならない,と考えたのだろうね.

 

そして現在,言葉の意味について考える学問,すなわち意味論では大きく分けると,

 

1)言葉の意味は心的過程である

2)言葉は世界の事物と結び付くことで意味を得る

3)言葉は他人の行動に影響を与えるので,言葉は一定の行動パターンと連合されることによって意味を得る

 

という3つの考え方が混在している状況にあるんだ.特に3)は現在最も数理的モデル化が進んでいる分野だね.シュリックをはじめとするウィーン学団は,命題の意味はその検証方法である,という説をとなえている,つまり,言葉を受けて行動することこそが,意味を与えるのだ,という考え方だ.さらに,オースティンとストローソンの影響をうけたサールによって言語行為という概念が確立し,バーワイズとペリーによって状況理論という数学的枠組を与えられるに至っている.彼らは,意味は頭の中にはない,と考えているのさ.一方で,脳科学の発達により心的過程の測定の可能性が拡大してきたことから,1)の考え方が復活する兆しもある.言葉の意味は言葉のクオリア,つまり主観的な質である,という主張なんかがそれにあたるね.」

バ「でも,3)の主張の根幹にある言語ゲームって一体なんなんですか?うまくイメージできません.」

テ「ワシにもよう分からん.ヴィトゲンシュタインの本はスカスカした記述があるだけで,どうにも解釈に困るし,それを分析している解説本はもっとわからん.」

ス「はっはっは.いまこうして話していることこそが,言語によるゲームなんですよ.」

テ「でも,そんな言い方してしまうと反証不可能やないか.そんなん科学的な説明とは言えんなぁ.」

ス「いやいや,そうでもないですよ.言語,つまり言葉のゲームを破綻させることはじつは簡単なんです.」

バ「ど,ど,ど,どーやったらそんなことができるんですか?」

ス「最も顕著に現れるのは文学だね.最新のメタ・フィクションと呼ばれている文学作品たちを読むことは,言語ゲームを破綻させるきっかけとなる.そして・・・・」

テ「そして?そしてなんやねん?」

ス「実はそんなことはもっととっくの昔にやられていたんですよ.そして今でも脈々と受け継がれているんです.」

バ「そ,そ,そ,それは何なんですか??」

ス「ふっふっふ,まあ,そう焦らずに.それについては謙虚に広い心で探求を続けていれば,いずれ見つかるよ.それよりまずはメタ・フィクション文学の作家を訪ねることをお勧めするね.私は.」

バ「紹介して下さい!!」

ス「じゃ,私の友人のイスジョ・ウズロバに会うといいよ.住所を教えてあげよう.」

 

と,スショール・トビゲンタシュインの取り出したメモには,珍妙な住所が書い

てありました.

 

バ「なになに,ダブリン州ニューヨーク市タンジール町?なんかとんでもない地の果てですね.」

ス「最も近くて最も遠い場所さ.なにせここは黄泉でも娑婆でもない場所だからね(^^;」

 

この後,またしても危険なギャグが展開されましたが,それについては割愛しま

す.

 

 

★メタ・フィクション文学:意味の破壊と創造

 

というわけで,どういうわけだか珍妙な住所をすらすらと辿り,バイゼンワウム

はイスジョ・ウズロバ邸の前にやってきました.とっても風変わりな場所です.

活気があって枯れていて,ゾクゾクするほど恐ろしくなぜか心が和む,懐かしく

て新奇な場所です.

 

バ「コンコンコン,こんばんわー.」

イ「あああっ!薬が切れたぁぁ!ウィルスがノヴァ警察と格闘しているっ!ベンウェイ医師を呼ばなければぁぁ!」

バ「.....ごくっ.なんかヤバいところに来たみたいだな.でも,せっかく来たんだし,逃げちゃダメだ,逃げちゃダメだ,逃げちゃダメだ・・・・・・」

イ「視力が,視力が,視力がなくなるぅぅぅ!....っと,今日の発声練習終り.ああ,こうして大声を出すと若返るわい.わっはっは.」

バ「.....やっぱり逃げようかな.」

イ「んん?誰だ,ワシの家の玄関に立っているのは?ああ,そういえば友人から悩める若者を導いてくれと連絡があったな.君が言葉の意味について悩む者かね?」

バ「あ,ハイ,そうです.ここに来れば言語ゲームを破綻させる方法について教えていただけると聞いたもので....」

イ「言語ゲーム!?なんじゃそれは.ワシは知らんぞ.あのな,言語は宇宙から来たウィルスなんじゃよ.」

バ「....はぁ?」

イ「だいたい,言語を疑うという行為を人はおろそかにしすぎている!だからワシは作品を書いて,世界中に警告しているんじゃ.君もタマには自分の発した言葉を疑ってみたらどうかね?」

バ「....はぁ.でもどうやったらそんなことができるのですか?」

イ「ふっはっはっはっは.では,ワシの開発した最強の言語ワクチン,カットアップとフォールドインの2つのメソッドを伝授しよう.っと,その前に言語ウィルスに侵されていた哀れな老人の作品を見せてやろう.来なさい.若者よ.」

バ「誰なんですか,その哀れな老人とは?」

イ「ワシじゃよ.」

バ「.......あの,話しの腰が折れまくっているんですけど.」

イ「だから,言葉を信用しすぎるんじゃない!まあ,それはともかく,ワシは言葉の意味を極限まで考え,ついに意味を生産するのは言葉遊びであるとの結論に達した.そして作品を書いた.「不意念願の夜明けの復活」(*7)という作品じゃ.そして,言語ウィルスに感染したんじゃ.そのワシが治癒できたのは,ウィルスを退治するメソッドを見つけたからじゃ.さぁ,まずは究極のウィルス小説を読みなさい.」

バ「その後に至高の小説が出てきて対決したりしないでしょうね?」

イ「ワシはそういう類の冗談は好まんのじゃよ.」

 

そういってバイゼンワウムが渡された1冊の本は,言葉遊びに満ちた,しかし一

見しただけでは意味がさっぱり分からない奇妙な小説でした.

 

(*7 注釈:この小説のオリジナルタイトルは「Finnegans Wake」である(笑))

 

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小説:フィネガンズ・ウェイクより

 

川走,イブとアダム礼盃亭を過ぎ,く寝る岸辺から輪ん曲する湾へ,今も度失せぬ巡り路を媚行し,巡り戻るは栄地四囲委蛇たるホウス城とその周円.

サー・トリストラム,かの恋の伶人が,短潮の海を越え,ノース・アルモリカからこちらヨーロッパ・マイナーの凹ぎす地峡へ遅れ早せながら孤軍筆戦せんと,ふた旅やってきたのは,もうとうに,まだまだだった.オコーネー河畔の頭ソーヤー団地がうわっさうわっさとダブリつづけ,ローレンス郡は常時阿集にふくれあがったのも,もうまだだった.鹿るのちに,山羊皮息子が若下司のいたりで盲碌伊作爺さんを食ぶらかしたのも,じきにまだだった.恋は発条サというものの,ステラで姉妹がふたりでに情ナサン男に憤ったのは,まだだった.親父の麦芽をちょっぴり醗酵させたのをジェムかシェンがアーク明りのもとで醸造し終えると,赤にじむ虹弓の橋が水面に弧つぜんと見えようとしていた.

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イ「どうじゃ,アナグラムにアクロスティックに掛け言葉に駄洒落に漢字の篇と旁の掛け合わせに音読み訓読みの倒錯のオンパレードじゃろう.表層的には見えない意味をいくらでも取り出すことができる.おまけに,ストーリーも多重構造じゃ.ダブリンの町の情景と旧約聖書の出だしを織り混ぜてある.なにせ,この小説の意味解読のために出版されたAnnotation辞書のほうが,もとの小説よりブ厚いのじゃ.まいったか,若いの.」

バ「まいったというかなんというか,よくまあこんなもの書きましたね.でも,確かに,沢山の辞書や資料を片手にこのテクストを読み砕く作業は,意味生産ですね.テクストから意味を絞り出すような.....」

イ「フランスの現代思想家たちは,間テクスト性だとか,エリクチュールにおける差異の生成行為だとか,テクストの快楽だとか,ポリフォニーだとか,いろいろ説明用語をつくっとるようだがな.ともあれ,これだけのテクストを,何年もかけて数百ページも書けば,すっかり意味の束縛をうけて,日常の書くことと読むことにさえ支障をきたすようになってしまった.そして,頭がすっかりトリップしてしまったある日,ノヴァ警察からの通報で,言語が宇宙から来たウィルスであるということに気づいたのじゃよ.」

バ「(小声で)どうやら言語ゲーム中毒者になってしまい,言葉の限界に近付いたんだろうな.それでこんなになっちゃったわけだ.」

イ「ん?なんか言ったか!?」

バ「いえいえ,なんでもありませんよ.で,どうやって治癒したんですか?」

イ「そうじゃ,そこであみだしたのが,カットアップとフォールドインというメソッドじゃ.正確には,ワシの友人のシンガイオってのが発見したんじゃがな.」

 

そう言って,イスジョ・ウズロバは新聞とハサミとフエキ糊をもってきました.

 

イ「いいかね,こうやってちょきちょきちょき....と,文章をバラバラにする.そしてえいこらさっと混ぜあわせて,並べ直す.そして,出来た新しい文章をタイプして清書する.これでカットアップ文章の完成じゃ.もっと手軽にしたければ,こうして記事を織り込んでつながる文章を探すのじゃ.これがフォールドインじゃ.」

バ「げげげっ!これじゃわけの分からない文章になっちゃうじゃないですか.」

イ「それこそがこのメソッドの狙いじゃよ.新しい,操作した本人にも予測可能な文章が出来る.もちろん,元の文章を書いた本人にも予測不能じゃ.だから,言語ウィルスに支配されることなく,言葉を操れる!こうして出来た文章は,フィクションのフィクション,つまりメタ・フィクションというわけじゃ.そして,言葉を使うというウィルスの意図を離れた文章を作れる.これなら,自分の発した文章を疑うこともできる.自分の発した文章をカットアップすれば,もうウィルスの意図の影響を受けなくてすむからな.このメソッドを使って作った小説がこれじゃ.読むがよい.」

 

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小説:ノヴァ急報より

 

例の炭素事件で,メリット・ジョンと旅してた/買物客の群れと集団窃盗罪/そこへ例のヤマが,宙からヤツに電波で届けられる/それでヤツは昨春Dフェンスに描きだした/そしてクソ町で圧搾空気の噴射でクソをたれ回り/十秒止まると,即座に二酸化炭素が切れてみんなそんな目的のために咳こむロビーの鉢植えヤシの下/

「止まるんじゃねえぞ,わかるか,「魚毒詐欺」トンズラだ」

「了解/現実的な程度に押えとけば背負わされずに/」

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バ「すごいですね.でも,さっき見せてもらった小説と似た雰囲気がしないでもないです.」

イ「そうじゃ,いいところに気がついたな.意味を巡る冒険は違ったアプローチでも同じ場所にたどり着くと言うことかも知れんな.そうそう,たどり着く場所にたどり着いた人をワシは知っておる.ここにある住所を訪ねてみなさい.」

 

イスジョ・ウズロバの家からの帰り道,バイゼンワウムは考えました.

 

「イスジョさんは言語ゲームを破壊する方法として,カットアップメソッドを作り出したんだな.そして,その結果作り出された作品は,ナンセンスという範疇に入る.または,読者に委ねられた作品ともいえる.エーコの言う,「開かれた作品」の概念に近いかも知れない.意味を求めるとき,言語ゲームを遵守するか,そこから逃げ出すか,これは重要な問題だ.コンピュータに日常的な言語ゲームをさせようとしたら,日常という生活形式を遂行する能力が必要になるのだろうか?それとも,ナンセンスという範疇の言語ゲームでも,会話を楽しむことはできるのだろうか?イスジョ・ウズロバの小説は一部で大好評だと聞くし,それもひとつの方法なのかもしれない.うーん.でもナンセンスを作り出す会話システムっていったいなんなんだろう?カットアップのナンセンスの源は,文脈の破壊のような気がするな.まてよ,人工無脳も文脈処理なんかしちゃいない.ひょっとして,両者の面白さには共通点があるのかもしれないな.......そういえば,イスジョさんがくれたメモはなんなんだろう?たどり着く場所にたどり着いた人って誰だろう?どれどれ...なに? マァw泣_さん?住所は印度県中国市日本町?東洋か......」

 

そして,マルダという”たどり着く場所にたどり着いた人”を訪ねることにしたバイゼンワウムでした.

 

 

★賢者と十牛図と悟りと意味

 

そしてバイゼンワウムは次の日,水墨画のような風景に熔け込んだ一軒の藁葺き

屋根の家の前にたどりつきました.

 

バ「コンコンコン.おはようございまーす.マルダさんはいらっしゃいますか.」

マ「いないぞ.」

バ「え?ここだとうかがったんですが.」

マ「いかにも,ここはマルダの家だ.」

バ「ではマルダさんはどこにいるのですか?」

マ「あんたの目の前におる.」

バ「....??? では,あなたがマルダさんなのですか.」

マ「朝飯を食べなさい.」

バ「あの,マルダさんに会いたいのですが....」

マ「私はマルダだ.」

バ「???マルダさんはいない,とおっしゃったじゃないですか.」

マ「私は”マルダはいない”とは言っておらん.」

バ「ちょっといい加減にして下さいよ!私は行き着くところに行き着いた人に言葉の意味について教わりたいんです!」

マ「怒ると胃に悪いぞ.胃が悪くなるとごはんが食べられなくなるんだ.ごはんが食べられないとお腹が空くじゃないか.お腹がすくと怒りっぽくなるぞ.怒ると胃に悪いんだ.」

バ「どうやら私は間違ったところにきてしまったんだな.」

マ「間違いとか正しさは結果として与えられるのだ.君は禅を学ぶ必要がありそうだな.」

バ「禅?仏教ですか?」

マ「そうだよ.」

バ「私は新興宗教を作ろうとしているんじゃないんです.科学として言葉の意味を考えているんです.仏教なんて,禅なんて!」

マ「おやおや,まあ,そう熱くなりなさんな.あんたは科学者なんでしょ?」

バ「そうです.科学者のはしくれですが,科学の心を大切にしています.いいかげんなニューサイエンスなんかするつもりありません!」

マ「まぁまぁ,あんたは人間について考えている.言葉も意味も人間の産物だからね.」

バ「そうです.」

マ「なら,どうして同じ人間の産物である宗教にも目を向けないんだい?」

バ「そ,それは......違うものだからです!関係ないんですよ!」

マ「どうして違うんだね?同じ人間の精神活動の産物だよ.宗教だから,なんて偏見をもったら,真実を見つめることは出来なくなってしまうよ.そもそも,宗教だって真実を真摯に見つめているんだし,そこから何かを得られるとは思わないのかい?科学者が偏見をもってしまったり,狭い了見で活動していては,そこから生まれるものも貧弱になるとは思わないのかい?」

バ「ぐっ.......」

マ「科学の手段を捨てる必要はない.しかし,既存の科学の視野だけに縛られる必要もまたない.そうは思わないかい?」

バ「......わかりました.ではあらためて,禅の思想を教えて下さい.いえ,学ばせて下さい.」

マ「そうそう,科学者が好奇心を忘れたらおしまいだよ.なんにでも首をつっこむ勇気と寛容さがなくちゃね.」

 

こうして,朝食を食べながらのマルダによる禅の講義が始まりました.

 

マ「禅については何か知っているかね?もぐもぐ.」

バ「一般的なことしか知りません.悟りという究極的な状態に達するのが目標で,修行をするとか.もぎゅもぎゅ.」

マ「はっはっは.まさしく一般的な答えだね.しかし,私流ではないな.まず,悟りについての誤解を解かなくては.悟りは究極的でもなんでもない.じつは赤ん坊や幼少時代にはだれもが持っている一般的認識状態のひとつだ.つまり,考え抜いて素直な認識を作り直す,とでも言えばいいかな.もぐもぐ.」

バ「ふんふん.もぎゅもぎゅ.」

マ「しかし,目標だけ示してそこに到達するまでの過程を示さないのは意地悪だ.禅の修行だってそこまで意地悪ではない.そこで,まず絵を用いて教えてあげよう.この絵を見なさい.もぐもぐ.」

 

そういってマルダが取り出したのは,十個の円に様々な図が書いてある絵でした.

 

図4 十牛図

 

マ「これは十牛図と呼ばれていて,悟りを開くまでの過程を示したものだよ.つまり,悟りを開くまでには十の段階がある,ということだ.個々について説明してあげよう.ごっくん.

最初に,この絵では象徴的に,前半では牛が求めるべき真理として描かれている.

最初の絵,”尋牛”は,真理を求めることを始めた人の図だ.ちょうど,今の君もそうかな.そして次の”見跡”は,真理,すなわち牛の足跡を見つけ,探し始めた状態だ.その次は,ついに牛の姿を見つけた”見牛”だ.しかし,牛はまだお尻を見せているにすぎず,その全貌は明らかではない.次は”得牛”.真理に縄をかけ,捕まえようとしてる.しかし,牛はまだ顔を見せてはくれない.まだ真理を捉え切ったとは言えない状態だね.そして”牧牛”.牛と仲良くなり,真理を連れて歩くことができるまでになる.次に来るのは”騎牛帰家”ついには牛にまたがり,真理と一体になる.そして家に帰ることになる.その次は”忘牛存人”.牛の姿は消えている.結局牛という自分の外の真理はステップでしかなく,自分の中に真理があることを悟るのだ.」

バ「よくある説明ですね.己が真理を持っているという.ごっくん.」

マ「しかし,これで終りではない.八番目の図が最も重要なもののひとつだ.それは”人牛倶忘”.全てが消えてしまう.しかし,注意しなければならないのは,単なる空白ではく,そこに円だけが存在していること.これを円環という.禅の真理は無にある,とよく言われるが,全くの空虚というわけではない.世界には円環が残るんだよ.そして次は”返本還源”.そこにあるのは人の意志ではなく,あるがままの自然の姿だ.最後は”入廊重手”先に悟った先人とともに,俗世間に入ってゆく.ある意味では,普通の人になったとも言えるし,子供に戻ったとも言える.ここで終っても,すなわち留まっても良いし,また”尋牛”に戻って何度でも同じことを繰り返しても良い.これで悟りのプロセスは一通り経験したことになる.」

バ「つまり悟りの真髄は円環にあり,世界を構成しているのは円環であると.そして円環に基づいた認識を構築することこそが,最も重要だということですね.」

マ「そう考えるのがよい切っ掛けとなるだろう.」

バ「円環とは閉じた構造ですよね,ある意味では世界と隔絶した認識を構成せよといっていることにもなるます.また,円は自己言及構造を表しているような気もします.ちょうど,ヴィトゲンシュタインの言う”氷原”の状態に似ていると思います.そして,それは意味の牢獄だと言う人もいますし,私もそう感じます.マルダさんは牢獄だと感じないのですか?」

マ「牢獄とはまた否定的な見方だね.たしかに,”人牛倶忘”の状態に留まることは牢獄かもしれないね.しかし,悟りの状態は結局本来人間が持っていた筈の素直な認識に戻ることであり,それが証拠に十番目の状態では世間に入ることになっている.また,十牛図のプロセスは何度でも好きなだけ繰り返せばいい.その意味では,牢獄といいながらも,出入りが自由なんだよ.好きな時に出入り出来る心地のいい場所は,すでに牢獄ではないと思うが,どうかね?」

バ「なるほど.円環を囲むさらに大きな円環を巡ることもできるというわけですね.」

 

★もうひとつの言語ゲーム破壊:禅問答

 

バ「でも,十牛図を見ているだけではまだ言葉の意味を解決するには不満足な気がします.抽象的ですから.」

マ「なら,禅問答を学ぶがいいよ.言葉を使うことで悟りを開くための修行装置だから.」

バ「禅問答?いったいどういうものなのですか?」

マ「はっはっは.すでに君は禅問答を体験しているよ.」

バ「えっ?!」

マ「君が最初に私に話しかけたとき,私は禅問答を試してみたんだ.君はまるでダメだった.だからこうして世俗のやりとりを君としている.」

バ「最初...?そうか,てんで意味が通じなかったあの会話ですね.」

マ「日常生活に捕らわれて意味を考えていてはできないのが禅問答だ.円環とは閉じることで完全になる.会話もおなじく,閉じて完璧な意味を持てるんだ.」

バ「ちょうど,ヴィトゲンシュタインの言う疑似命題を通り越して真なる命題にたどりつくように....」

マ「そう.では,これを読んでみなさい.禅問答の例題と回答集だ.」

 

そういってマルダが手渡したのは.「禅林句集」「無門関」「臨済録」でした.

その中は,こんな会話であふれていました.

 

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会話例1.「鸚鵡返し」

 

僧「如何なるか是れ道」

和尚「道」

僧「如何なるか是れ仏」

和尚「仏」

 

会話例2.「見る」

 

宗照という僧が,木庵禅師を訪ねて乞うた.

宗照「私はいたって愚かな者であります.どうか箇の見処をお示しいただきたい」

木庵,面前の香炉を指しながら,「どうだ,見えるか」

宗照「見えます」

木庵「どう見える」

宗照「分かりません」

木庵「それでも見えるというのか」

 

会話例3.「音楽会」

 

高沙弥が薬山の寺にやってきたとき,たまたま雨にあった.

薬山「高,来たな」

高「はい,和尚さん」

薬山「ひどく濡れたな」

高「和尚,そんなに鼓を打ち鳴らしてはいけません」

薬山の高弟の一人である雲巌が,たまたまそこに居合わせて言った.

雲巌「革がない太鼓をどう打つのですか」

もう一人の弟子の道吾が言った.

道吾「太鼓もないのにどんな革を打つのですか」

薬山「今日はたいへん結構な音楽会をやった」

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マ「会話例1.は悟っていない僧の質問に,覚者,つまり悟った和尚が答えている.2.はその逆で,悟った木庵が悟っていない宗照に質問している.3.においては薬山と高の二人は悟っており,弟子の雲巌と道吾が悟っていないので両者の会話についていけていない,というものだよ.」

バ「まるでイスジョ・ウズロバさんのところで見た小説のようだ.いや,もっと凄い.」

マ「気に入ったかね?」

バ「これは会話の行き着くところのひとつのような気がします.そして,ある意味では最も簡単な会話のような気がします.計算機にもできるような.....これが人工無脳やchatter botに私が見い出した可能性の行く末なのかもしれません.なんだろう,とても大切なことを見つけたような気がする.......」

「ほら,謙虚な心と広い視野をもって学べば,見つかると言ったろう.」

バ「スショールさんですか.いつの間に....そうか,禅の真髄と禅問答こそ,スショールさんの言っていた,大昔から続いている言語ゲームを破綻させる方法だったんですね!」

ス「その通り.そして,これはヴィトゲンシュタインの哲学の真髄とも一致するんだ.トートロジー以外の全ての言明は疑似命題だ,しかし疑似命題を通じて哲学することによって,真なる知性解放がなされる,という彼の思想のね.厳密な意味では,様々な数学的モデルの多くも,疑似命題の集合でしかない.それを乗り越えたとしても,真の命題しか唱えることができないのは牢獄に均しい.牢獄から逃れるためには,あらゆる言語ゲームを破壊し,禅の思想を受け入れるのが賢明な方法なんだよ.」

 

★人工禅問答:究極の人工無脳?

 

マルダの家を後にし,バイゼンワウムは研究室に帰ってきました.

 

バ「皮肉なのかどうかわかりませんが,人工無脳は禅問答をするのがとても得意なんだ.一番簡単な方法はこうして入力を無視して応答することだな.簡単にプログラミングできるぞ.」

 

 

図5 禅問答無脳のアルゴリズム

 

バ「できた.よし,早速対話してみよう.」

 

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禅問答無脳との対話例

 

私は悟者である.禅問答をしたければ,するがよい.

> わはは

あなたのお腹が痛いなら,セイロガンをあげよう.

> いらないです.

いろはにほへと.

> ちりぬるを

破れ太鼓は打てません.

> あーこりゃこりゃ

是れ一山.

> みかん一箱

世の中は,寝るより楽はなかりけり.浮世の馬鹿は起きて働く.

> そうやろか

コケコッコー.

> あさですよおー

あさですよおー

> そうですよー

之を求むるに,不可得であります.

> なるほど

なるほど

> あらら

私とおない歳.

> だれが?

よっこらせ.

> どっこいしょ

ワンワン.

> ばいばい

私の名前はボット.

> うちのいぬといっしょ

是れ一山.

> みかん一箱

之を求むるに,不可得であります.

> さようならー

やかましい!

> うっさい,ぼけ.おとといきやがれ.

そんなもんがあってたまるか.顔洗って出直してこい.

> なんですか? この亀虫が

心無ければゴボゴボゴボ.

> 豆腐の角で頭打ってしにやがれ

犬が電柱にションベンをしかけた.

> ばいばい

そんなもんがあってたまるか.顔洗って出直してこい.

> いやーん

やかましい!

> ばいばい.

じゃんけんほい.

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バ「うーん,こんなのでいいんだろうか.確かに禅問答っぽいけど.円環構造をプログラムに埋め込むということは,一つは外界と分断された内部ループを形成することだ.そして,それはこのプログラムでも実現できている.しかし,円環の思想の真髄はそれだけではないはずだ.どうすればいいんだろう?もういちど,スショールさんを訪ねてみよう.」

 

★円環と循環:意味を創る形

 

というわけで,ふたたびマルダの家にやってきたバイゼンワウムです.横にはス

ショール・トビゲンタシュインもいます.

 

バ「円環とプログラミングについて考えて,禅問答無脳を作ってみました.どうでしょう?入力を無視することで無分別な回答をする会話システムです.禅問答になっていますか?」

マ「はっはっは.機械は犬のように最初から無機なる存在だよ.しかし,気の効いた禅問答はできてないね.」

バ「どんなふうに改良すればよいのでしょうか?」

ス「円環についてもっと深く考える必要があるね.円環はその形を構成しつつも,周囲の情報に影響されて常に姿を変えている.つまり,ソレノイドのようなものになっているんだ.それは,ヴィトゲンシュタインの言っている「思考し表象する主体は存在しない」という”語り得ぬもの”が”示され得る”ことに匹敵する.これは形而上の問題だけではなく,生命科学の分野でも最近言われていることだ.生命とは,関係を形成し自己を常に再生産し続けることで存在する自己言及構造である,というオートポイエーシスの概念と一致するんだよ.」

バ「言葉の意味を説明する行為は,言葉によってなされる限りにおいて永遠に循環し無限退行する.しかしその循環の無限退行構造こそが,”語り得ぬもの”が”示され得る”ことを含意する......常に外を指向し,しかしその都度内に戻され,その変化の履歴として円環構造が変化する....」

ス「そう.ちょうどアメーバの,局所の連係が全体の情報を欠いたまま行なわれることで形が変形し,その形が結果として行動の履歴であるように.」

バ「でも一体どうやったらそんな構造計算が出来るのか....量子計算?それとも光コンピュータ?....わかりません....」

ス「ヒントをあげよう.自然数の概念こそが悪魔なんだ.自然数の概念と実数の概念の関係は,分節化をする言葉と円環構造の時間発展の関係に均しい.自然数の概念に依存しない数学的公理系を作り,そのなかで離散を表現するんだ.もちろん,自己言及構造がプリミティブとして存在するような.そこで全てが終り,そこから全てが始まるだろう.さぁ,紙面が尽きようとしている.私は行かなくては.」

バ「ちょ,ちょっと待って下さいよ.紙面ってなんですか?もっと教えて下さい.」

ス「君はもう出口であり入口である場所に立っている.機会があったらまた話してあげるよ.」

バ「編集部さんっ!機会を,機会をもっとください〜....って,私は誰に向かってお願いしているんだ?」

 

さあ,謎の言葉を数々残しつつ,ワケの分からないまま紙面がつきてしまいました.

まるでEVAみたいですね(謎).

 

 

★参考文献

 

J Weizenbaum ”ELIZA -- A computer program for the study of natural language communication between man and machine”Communications of the ACM 1966

K Hajiri "Reconsider Eliza: Classification of human-computer conversational interaction" Proceedings of ROMAN'98 1998

往住彰文 ”情動”(第5章) 岩波講座認知科学 1994

”人工無脳 -- パソコンで話すか,パソコンと話すか --” BNN出版 1987

廣松渉ほか ”岩波 哲学・思想辞典”岩波書店 1998

L・ヴィトゲンシュタイン ”論理哲学論考”大修館書店 1976

L・ヴィトゲンシュタイン ”哲学探求”大修館書店 1976

D・ジャーマン監督 ”ヴィトゲンシュタイン”1993

茂木健一郎 ”脳とクオリア”日経 1998

J・ジョイス (柳瀬尚紀 訳)”フィネガンズ・ウェイク”河出書房新社 1991

柳瀬尚紀 ”フィネガン辛航紀”河出書房新社 1992

W・S・バロウズ (山形浩生 訳) ”ノヴァ急報” ペヨトル工房 1995

B・マイルス(飯田隆昭 訳)”ウィリアム・バロウズ”ファラオ企画 1993

J・コクトーほか (松岡和子ほか 訳)”ライターズ・アット・ワーク” ペヨトル工房 1989

黒崎宏 ”ウィトゲンシュタインと禅”哲学書房 1987

星川啓慈 ”禅と言語ゲーム” 法蔵館 1993

柴山全慶 ”禅林句集”其中堂 1972

破有法王 ”現代相似譚評論”みづほ書房 1916

”臨済録”岩波文庫 1989

”無門関” 岩波文庫 1994

入不二基義 ”Qualiaの不在”科学哲学 Vol.30 1997

入不二基義 ”「ない」よりもっと「ない」こと”駿台フォーラム第15号 1997

U・マトゥラーナ,F・バレーラ ”知恵の樹”朝日出版社 1987

 

(C) 羽尻公一郎 1999

 

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このRFCの場合、

羽尻公一郎「人工無脳が禅を語る日」 「bit」vol.31, No.6 pp.30-37, No.7 pp59-65

(1999)

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